リハビリテーション医学の整理について

 武蔵ヶ丘病院 細川 浩

 

 「リハビリテーション医学とは?」という問いに対して、自分なりの答えを持って、患者家族に返答できる医療者がどれだけいるのだろうかと最近更に感じる。以下リハビリテーションの単語をリハビリと略する。
 臨床現場では、リハビリをしてよくなったと患者や家族に感謝されることが多い。保険診療で規定された疾患別の算定期限まで入院をお願いされることもある。専門家としてリハビリ帰結予測をもとに最大限のリハビリ医療の提供をすることが求められてはいるが、何をもって良くなったのかを常に模索しながらリハビリを提供する必要がある。つまり、患者家族のニードにあわせた最適解を見つけることがリハビリ医学の興味深いところでもあり、難しいところでもある。例えば、リハビリ医が、脊髄損傷の患者に「歩けません」と宣告すれば、その患者は一生歩けないことにもなる。仮に車椅子生活が主となったとしても、様々なシステムや道具を駆使して練習すれば、42.195㎞でなくても、42.195m歩くことも可能となる方もいる。今はそのような時代でもある。
 「リハビリテーション医学とは?」に関して、リハビリ学会では活動を育む医学と定義づけされている。生活の問題は活動障害とも言える。既存の医学は生存・恒常性・病理モデルで解決に導く医学とすれば、リハビリ医学は生活・活動性・システムで解決に導く医学である。同内容は医学生時代に教育されていない(現在はリハビリ講座のある医学部が増えてきており、教育が始まっている)ため、特に既存の医学教育を受けてきた医師には理解されにくい分野である。多職種連携といわれているこの時代ではあるが、医師の理解が得にくい組織はベクトル合わせも難しいとも推察する。
 我々の法人では、活動というキーワードをより具体化して、「再び歩く」「再び活きる」「再び食べる」をスローガンに、医療保険、介護保険分野におけるすべての患者や利用者に医療やサービス提供を心がけている。それは漫然としたリハビリの提供ではなく、客観的な評価(歩行分析や嚥下内視鏡・嚥下造影検査から可視化、定量化する)と適切な訓練の立案と提供(ロボットを含む最先端のリハビリ機器を使用しながら)、家族や社会資源をシステムで解決するチームアプローチする方法論をもとに展開している。そして、リハビリ専門医がそのチームを運営している。
 皆様もそれぞれの立場で医療を実践し、リハビリ部門との協働で最適解を見つけていると考える。今一度、この機会にリハビリ医学を整理してみるのも良いのではないかと考える。もちろん、私自身も専門家として研鑽を積みながら、皆様と協働していきたいと考えている。リハビリ医学の理解と実践に関してお困りのことがあればお声かけ頂ければ幸いである。このようなことを考えながら藤田医科大学での国内留学から熊本に戻り、寄港地を見つけながら方位磁石をかざす毎日である。


 

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