熊本県保険医協会勤務医部会発足の経緯
勤務医部会 副島 秀久 (済生会熊本県支部長)
勤務医部会発足の背景には急性期病院を中心とした勤務医の疲弊がありました。2004年に新臨床研修医制度が始まり、系統的・総合的な視点から診れる医師の養成と言う意味では新たな前進でしたが、2年間は現場への新しい医師の供給が細り、ただでさえ多忙な病院勤務医に極度の負荷がかかり始めていました。そのうち医師は過剰になるという気楽な予想とは裏腹に、病院現場では勤務医の過労死、看護師の早期離職、司法警察の臨床現場への直接介入、訴訟リスクの増大、患者家族のクレームや過大な要求など、ある種、殺伐な雰囲気が漂い始めていました。
2006年11月に「医療崩壊―立ち去り型サボタージュ」を出版し、大きな話題となっていた虎の門病院の泌尿器科医である小松秀樹氏の講演会が熊本で開催されました。その懇親会の席上で当時の吉住会長から、勤務医部会を作ってはどうかというご提案を頂き、さっそく主だった病院の勤務医に声掛けをして2007年1月に準備会を発足しました。勤務医の抱く危機感や問題意識も強かったためか、思いのほか賛同者が多く、2007年4月21日には設立総会に漕ぎつけることができ、設立趣意書を提示し勤務医からのメッセージとしました。また、設立時にはシンポジウムを行い、マスコミ各社にも取り上げてもらいました。社会に対して勤務医として訴えかける場や、議論する場そのものが殆ど無く、忙しさにかまけて現状の課題を深く掘り下げることができなかったことも反省となりました。
様々な活動や提言を行ってきましたが、小さな声でも上げることが重要であり、それが問題解決の端緒となります。もちろんその効果がいかばかりであったかはわかりません。あれから16年、吉永、橋本両先生に引き継がれ、月一回の勤務医部会は働き方改革やCOVID-19対応でも、病院現場の情報交換の貴重な場として機能しています。お互いが立場を超えてフリーに話ができる勤務医部会を大切にし、これからも仲間を増やし、充実した楽しい会にしてほしいと願っています。