子どもたちに恥ずかしくない社会にしよう

 くわみず病院 片渕 美和子

 短大の看護科に勤務していた頃の学生達から卒後20年の会に呼ばれた。40歳代になる彼らがそれぞれの道で、様々な家庭環境を抱え、子育てしながら仕事を続けている様子を話してくれた。病院勤務、介護施設勤務、保育所や事業所を経営している人もいて、皆本当にたくましい。現在のLINEでの話題は2交代勤務の実状に関する情報交換である。夜勤中の休憩や仮眠、夜勤明けの勤務など、色々勉強させてもらっている。

 さて、人口動態統計が発表され、2024年の日本人の出生数は68万6061人、衝撃的な数字である。平均初婚年齢は夫31・1歳、妻29・8歳、初産の平均年齢は31・0歳、合計特殊出生率は1・15(一人の女性が一生に産む子どもの数)、さらに2025年の出生数は65万人程度と推定されている。30歳以上の妊婦では妊娠や出産時のリスクが上昇し、高齢妊娠・高齢出産と言われる35歳以上ではさらに問題は大きくなる。高齢での妊娠・出産の割合が増加し、体外受精などの医療によって生まれた子どもは10人に1人の割合となっている。しかし少子化は国の予想より15年早く進んでいるとのことである。現代の日本において、妊娠・分娩は安全に経過し母子ともに無事であることが当然であると考えられており、産科医療に要求されることは大きくなるばかりである。少子化対策もあれこれ図られ、厚生労働省は2026年度には正常分娩での自己負担をなくすよう検討している。妊婦のための支援給付は令和7年度からの新制度では、所得制限なく妊娠届出時に妊婦1人に5万円、出産予定日の8週間前の日以降の胎児の数の届出後に5万円×胎児の数の2回に分けて経済的支援が実施され、死産や流産(人工妊娠中絶を含む)という結果であっても対象となっている。果たしてその効果はどのように現れるのだろうか?

 1966年は丙午の年で出生数はその前後より50万人ほど減少した。丙午について知らない人も増えているが、60年後に再び訪れる2026年の丙午、出生数はどうなるのだろうか?経済格差が拡大し、情報過多の社会の中で、普通に地道に働き、地域との関わりの中で子ども達の成長を見守ることが困難な時代になったようである。多くの若い人達が経済的に困難な状況にある中、パートナーとの生活や子育てを想像することすら難しいのかもしれない。子ども達が自分の進む道を選択する努力を妨げられることなく明日のことを考えられる社会であって欲しいと思う。

 1925年生まれの父が亡くなって10年、生きていれば100歳である。遺品整理の中で見慣れない名簿に目が留まった。飛魂会・三重海軍航空隊飛行専修第2期予備生徒の同期生名簿である。海軍予備生徒に志願する資格は、大学令による大学の予科、高等学校高等科、専門学校またはこれと同等以上の学校に在学したる者で、19歳から40歳未満(飛行専修を志願する者は28歳未満)となっている。昭和19年8月に様々な大学、学校に在学する学生や生徒達が第2期予備生徒として採用され、父を含む500名余の生徒は10か月の訓練の後各地に配属されたが、戦没者を出すことなく終戦を迎えている。敗戦後の困難な時代を生き延びた彼らは、今の日本を空から眺めてどのような想いを持つのであろうかと考え込むこの頃である。

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