同意書が取れない!!
朝日野総合病院 片渕 茂
侵襲のある検査や手術の同意が取れないことが増えています。朝日野総合病院は救急から療養、緩和ケアまで6種類の病棟があり多様な病態の患者様が入院しているケアミックス型病院です。高齢化により認知症などで患者様本人からは同意が取れないことが増えています。近親者がいないため縁が薄い孫や姪から同意を取ることもあります。また、ご家族が関東圏など遠方にしかいない時には電話による同意を頂き、後で文書による署名を頂きます。しかし、医学知識がないご家族が電話で十分に理解することは困難です。新型コロナ感染症が猛威を振るっている時に緩和ケア病棟ではFaceTimeを使い動画による面会が行われていました。FaceTimeは双方が暗号化され記録が何も残らないなどセキュリティは完璧とされていますが、Apple製品のみ利用できます。今後はさらに優れたツールの開発が望まれます。
家族が全くいない時に、成年後見人制度がこうしたケースに対応する制度ですが、実際には後見人が「医療行為の同意はできない」と回答する例が増えています。その背景には制度が財産管理と身上監護を主な内容としている一方で、手術などの侵襲的な医療行為に対する同意権が明確に法律で定められていないという現状があります。後見人の多くは法的責任を懸念し、同意を避ける傾向にあります。
かつては、介護施設の施設長である医師が、本人の生活歴や性格、価値観をよく知る立場として、代弁者として治療の同意を行うこともありました。しかし最近では、施設長による同意も断られるケースが増えています。これは、施設長には法的代理権がないことから、医療訴訟リスクを避ける動きが背景にあると考えられます。
こうした状況を受けて、病院の倫理委員会が最終的な意思決定支援の場とされるケースが増えています。倫理委員会で本人の推定される意思や最善の利益に基づいて治療方針を検討します。ただし、倫理委員会には法的な代理権がないため、判断の法的効力が不明確です。治療を実施する側が治療を受ける者の代理者として決定する所に問題があります。また、委員の構成や判断基準にばらつきがあることで、治療方針に一貫性を欠く可能性も指摘されています。問題点はあるものの、現状では実行可能な最善の方法として行われており、医療者以外の外部支援者を加えた上で合議することが望まれます。今後は判断能力を失う前の段階で、任意後見契約や事前指示書を進めることが求められています。
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